大判例

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東京地方裁判所 昭和41年(刑わ)2309号・昭41年(刑わ)3168号・昭41年(刑わ)1328号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判決理由】(罪となるべき事実)

被告人横山政夫、同矢沢芳昭、同宮本靖夫は、前同日同時刻ころ、前同番地先路上において、前記第一の犯罪事実(注・飲酒の上での器物損壊)などの発生の急報によりかけつけて来た警視庁赤羽警察署桐ケ丘巡査派出所勤務巡査千葉貞男(当時二一年)から、「ここで何をしていたのか」などと職務質問され「一寸交番まで来てほしい」と同行を求められや、同所に居合わせた被告人関口照雄ら三、四名と共に、交々、「俺達は何もしていないから行く必要はない」などと叫び、右職務質問および同行を免かれるため、同巡査を取り囲み、被告人横山が、ガラスコツプで、同巡査の頭部を殴打し、次いで、附近の人からの通報を受け、前同所に赴いた前記派出所勤務巡査横田直恵(当時四〇年)において、右千葉巡査の状況を目撃し、同巡査を応援するため、前同様の職務質問をし、同行を求めたのに対し、被告人関口照雄、同幕内武男らと共に、右横田巡査をも取り囲み、被告人横山が、牛乳びんで、同巡査の頭部を殴打し、被告人矢沢、同宮本は、右のような状況のため、右職務執行が困難である旨の報告および右職務執行につき応援要請をすべく、急拠、前記派出所に赴かんとしていた前記千葉巡査に対し、その肩や胸部を押しながら、同番地先の雪印乳業株式会社東京工場の金網塀ぎわに至り、同所において、同巡査を右金網塀に押しつけるなどの暴行を加え、続いて、同巡査を追つて、前同番地所在の前記巡査派出所に至り、同派出所内において、本署に対し、電話をもつて、右職務執行の困難な状況および右職務執行のための応援要請をしようとした同巡査に対し、これを阻止するため、受話器をもぎとり、通話ボタンを押すなどして、右職務執行に関する通話を不能ならしめ、さらに同巡査の腕を引張るなどして、同巡査を右巡査派出所外に連れ出し、前記雪印乳業東京工場通用門前路上において、なおも右通報のため右巡査派出所へ戻ろうとする同巡査に対し、両側から、その両腕を掴んで押えるなどの暴行を加えたところ、被告人横山は、被告人矢沢、同宮本の右暴行に乗じ、同巡査の着装している拳銃を奪取したならば、同巡査は、被告人らに対する職務質問や同行を求めることを一時中止し、被告人横山の後を追つて来る筈であるから、この間に他の被告人らを逃走させ、自らは、右奪取した拳銃を捨てて逃げようと考え、やにわに、被告人矢沢、同宮本から、右のような暴行を受けている同巡査に体当りするとともに、右の目的をもつて、同巡査着装のSW四五口径第一五八九一九号拳銃一挺を強引にもぎとり、もつて、被告人横山、同矢沢、同宮本は、共謀のうえ、右千葉、横田両巡査が共同して執行していた被告人らに対する前記職務質問、同行および応援要請などの職務執行を妨害すると共に、前記暴行により、右千葉巡査に対し、加療約一週間を要する左後頭部打撲擦過傷の右横田巡査に対し加療約一〇日間を要する左側頭部打撲皮下血腫の各傷害を負わせ<中略>

(公訴事実中被告人横山政夫に対する強盗の訴因について)

本件公訴事実中「被告人横山政夫は、判示第二の二記載の日時に、判示の雪印乳業通用門前路上において、被告人矢沢、同宮本が判示のとおり前記千葉巡査の両腕を掴み押えつけて、同巡査の反抗を抑圧している際、これに乗じ同巡査から拳銃を強奪しようと企て、やにわに体当りすると同時に、その着装にかかるSW四五口径第一五八九一九号拳銃一挺を両手でもぎとり、もつてこれを強取すると共に、同巡査の職務の執行を妨害した」とある点のうち強盗の訴因について検討すると、被告人横山が、判示第二の二記載のとおりの日時場所において、同判示のとおりの手段を用い、前記千葉巡査から、SW四五口径第一五八九一九号拳銃一挺を奪取したものであることは、右判示のとおりであり、しかも、右奪取の際において、被告人横山が右千葉巡査に対して加えた暴行は、右の事実を認定するために挙示した各証拠によれば、反抗を抑圧する程度に達していたことも明白である。しかしながら、強盗罪の故意には、いわゆる不法領得の意思が必要であり、しかも、右不法領得の意思とは、権利者を排除し、他人の財物を自己の所有物として、その使用方法に従い、これを利用若しくは処分する意図の存することをいうのであつて、単に損壊または隠匿の意思をもつて、他人の占有する財物を奪取する行為には、不法領得の意思がないと解すべきところ、被告人横山の右拳銃奪取行為の際における意思は、判示第二の二のとおりであつて、その際、同被告人に右のような不法領得の意思があつたものと認定するには、疑問がある。もつとも、右の各証拠ならびに適法に取調べた証拠によれば、同被告人が、右拳銃奪取後間もなく、右拳銃奪取現場付近において、右千葉巡査らの前記職務執行の応援に来たパトカーに向け、右拳銃に装てんされていた弾丸四発を発射している事実が認められ、このような同被告人の右拳銃奪取後間もないしかもその付近における右拳銃の使用状況からみると、同被告人は、右拳銃奪取の際、右拳銃を自己の所有物として、その使用方法に従つてこれを使用するいわゆる不法領得の意思を有していたのではないかとも考えられなくもないが、同被告人の検察官および司法警察員に対する各供述調書などによれば、同被告人は、判示第二の二記載のとおりの目的で、右拳銃を奪取した後、直ちに逃走をはかり、その附近に拳銃のサツクと吊紐を捨て、右奪取現場からやや離れた反対側の歩道附近に来た時、同被告人の進行方向からパトカーが来るのを認めたので、ここで逮捕されては大変だと考え、拳銃を発射して脅してやれという気になつて、右の発射行為に出たものとは認められるが、右発射行為をもつて、直ちに、右拳銃奪取行為の際、右のような不法領得の意思があつたとまで認めるに至らないから、右発射行為によつても、未だ、前記の疑問を解消できない。以上の次第で、上記強盗の訴因については、結局犯罪の証明がないことに帰するのである。(外池泰治)

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